「ディレクター」その意味と仕事の内容とは?

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Photo by: Sarah Pflug @Burst
ディレクターって何をする人なの?と聞かれることが多いと思います。実際に何をやっているのかわからなかったり、雑用としか言えない仕事内容でも肩書きはディレクターだったりします。
あらためて、ディレクターという仕事とその能力について考えてみたいと思います。

一般的には「現場監督」

wikipediaを見ると、以下のように書いてあります。
制作物の作品としての質に責任を持つ者のこと。その責務を全うするために、企画・立案・制作に関与して業務全般をつかさどる場合もある。この場合は「ディレクター職の者がプランナー職・プロデューサー職も兼任することが多い」と言うこともできる。ディレクター本来の担当範囲は企画・制作に及ぶものではない。制作物の経済的責任を持つプロデューサーと対をなすポジション。テレビでは、監督という呼称よりも、ディレクターを広範に用いている。
映画だと監督という呼び方が定着していますね。
製作物の品質に責任を負う、ということは製作における管理を行うことになります。つまり、
ディレクターとは製作現場の仕事を仕切って進める人
ということが言えると思います。
そのために必要な仕事は製作物により多岐にわたります。細かな仕事ひとつひとつに明確な担当者がいないことも多く、そのために雑務のような仕事も数多くある、ということですね。

ディレクターに求められる能力

ディレクターの仕事が明確になりました。その中でも、以下の3つが求められると思います。

仕切る力(段取り力)

製作現場で仕事を進める上では、まずこれと思います。どのような段取りで進めるか。「これを決めて、その次にこれ」と進め方を想像できないと、いざ仕事を進める時にあれが決まっていない、これが決まっていないと穴が出てきてしまいます。穴は出てくるものですが、いかにそれを減らしてスムーズに進行していくかがディレクターの腕の見せどころなのかと思います。
  段取り

まわりを動かす力

段取りを決めた上で、それをすべて自分でやるなんてことはできないので、まわりにどう動いてもらうかを調整します。イメージしやすいように、また認識に齟齬が無いように資料を作ったり、適切にミーティングを開いて製作に必要な仕事に対して、それを誰がいつまでにやるかを決めます。
または、段取りの途中にどうしてもわからないことが出てきます。いわゆるその道のプロでないとわからないこと、または担当者でないと把握できないことなど、自分だけではどうにもわからないことは有識者に協力を仰ぐ必要があります。
そのように、自分ひとりでは進められないことに対して、まわりを動かして進めていくことが求められます。
人員配置

方向を指し示す力

最終的には、その仕事がどこに向かっているのか、を求められます。企画や戦略に明確な方向がなくても、製作現場という船がどの方角へ進んでいるか、また進んだ先にどんな未来が待っているかは船長とも言えるディレクターが指し示さないといけません。人を動かす上で必要なことだからです。
逆に方向を示して適切にモチベートすれば、まわりが適切に動いてくれて結果的にうまく製作が進むことになりますので、ここが最も大事な力となります。
 direction

ディレクターの「職能」

ディレクターの職能、担当するなかで培われる能力は
この2つがあると思います。

何かをつなぎあわせる力

例えば、現場で進行するにあたり、さまざまな問題に直面します。それを乗り越えるためには、その場にあるもので工夫して対処しなくてはいけません。そこでは、すでにあるもの同士をつなぎあわせて問題を解決できる解を導く必要があります。そのために、「何かをつなぎあわせる力」が培われます。
これはさまざまなものに応用できます。
例えば、アイデアであればそれはまさに既存のアイデアのつなぎあわせです。
人同士であれば、先に示したまわりを動かす力に直結します。
プログラムのコードだってつなぎあわせれば、その現場でくらいは役に立つものが作れたりします。

先回りする力

ディレクターでもいろんな方がいましたが、本当にすごい人は、未来を見てきたかのように先回りした一手を打って、スムーズに仕事を進めます。おそらく、経験から判断して「こうしておいた方がよい」という手が見えるのだと思います。
超能力の類いのように感じられますが、「ブリコラージュ」と呼ばれる考え方が近いと感じています。
ブリコラージュとは、wikipediaの内容そのままだと以下のようになります。

ブリコラージュ(Bricolage)は、「寄せ集めて自分で作る」「ものを自分で修繕する」こと。「器用仕事」とも訳される。元来はフランス語で、「繕う」「ごまかす」を意味するフランス語の動詞 “bricoler” に由来する。

ブリコラージュは、理論設計図に基づいて物を作る「エンジニアリング」とは対照的なもので、その場で手に入るものを寄せ集め、それらを部品として何が作れるか試行錯誤しながら、最終的に新しい物を作ることである。

レヴィ=ストロースが「野生の思考」でマトグロッソのインディオたちのフィールドワークにおいて、ジャングルの中での移動生活で持てる物が限られている中、「何の役に立つのか今は言えないが、いずれ役に立ちそうな気がするもの」に反応して「合切袋」に放り込む、その「先験的な知」のことです。
内田樹先生は次のような言及もしています。
どうしていいかわからないときにでも、「とりあえず『これ』をしてみよう」とふっと思いつく人がいる。そういう人だけが「なまもの相手」の現場に踏みとどまることができる。どうしていいかわからないときにも、どうしていいかわかる。それが「現場の人」の唯一の条件だと私は思う。
何をすればよいかわからない時に、すべきことがわかること。それがディレクターの力として養われるのではないかと思います。
人間にはそのくらいの能力はあるのではないでしょうか。
このことが言及されている内田先生の本は以下です。

「そのうち役に立つかも」の章です。

最後に:ディレクターは独自の武器を持とう

これまで見ましたように、ディレクターの仕事は「製作物の品質に責任を負う」ということであり、その達成のためには多種多様な方法があります。それこそ人の数だけやり方があって、決まった正解は無い世界です。そのため、自分で成果を出せる自信のあること、得意なことを明確にして、自分の武器にしていくことが大事なのだと思います。
わかりやすい例では「アートディレクター」です。
製作物のコンセプト、イメージをひとつの世界観としてまとめあげるのが得意な人がアートディレクターとなります。
そのようにして、自身の得意とする領域を見つけ、肩書きをより具体化するのが、ディレクターの生存戦略であり、仕事を豊かなものに変えていくことができるのだと思います。
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